一人ひとりが基本の感染対策を続けて

2021/06/16

新型コロナウイルス感染症が報告されて、早くも1年半が過ぎました。常にマスクをつけて生活することが当たり前になり、長期の休校や外出自粛など様々な行動制限を経験し、社会は大きく変化しました。
この原稿を書いている5月は宮崎にも第4波が到来し、毎日2桁の感染者が報告され続け、県独自の緊急事態制限が発出されました。新型コロナにかかってもすぐには入院できない方が宮崎でも出てきています。


宮崎生協病院
病院感染対策委員会
委員長
医師 三宅 知里

重症化しないように早めの受診を

まず、新型コロナの典型的な症状、経過、重症化のリスク、後遺症などについて、現時点での知見をまとめます。
新型コロナに感染して症状が出るまでには1〜2週間と幅がありますが、多くの人は4〜5日で発症します。最初の症状としては、熱や寒気、
咳、息切れ、全身のだるさなどが多く、風邪やインフルエンザに似ています。さらに一定の割合で感染しても無症状の方もいます。初期症状だ
けで新型コロナを疑うのはとても難しいのです。
発症してから1週間程度は軽い症状が続き、約80%の方はそのまま治癒しますが、約20%の方は発症して7〜10日目にかけて悪化し、約5%の方が重症化するとされています。新型コロナで重症化しやすいのは高齢者と持病のある方で、持病は複数あるほど入院リスクや死亡リスクが高くなるため、早めに受診することが望ましいでしょう。
若くて元気な方も、新型コロナから回復した後もなんらかの後遺症に悩まされることがあり、咳や痰、だるさや痛み、呼吸苦、味覚嗅覚障害などの症状が発症2か月後も10〜20%、発症4か月後も2〜10%で見られるという調査があります。これらの後遺症に対する治療は今のところないため、新型コロナにかからないにこしたことはありません。
新型コロナの感染予防のためには、これまでに「密を避ける」と繰り返されていますが、実行が不十分であることは否めず、その徹底が必要です。マスクをつけること、マスクをつけていても人と2m以上の物理的距離を保つこと、換気の悪い空間を避けることなどを心がけましょう。
感染しても無症状の人がいる以上、自分が感染しているかもしれないという気持ちで行動してほしいと思います。

ワクチン接種をすすめましょう

そして、今のいちばんの希望は新型コロナワクチンです。2回の筋肉注射による接種で、感染予防・発症予防・重症化予防の全てに非常に効果の高いワクチンです。変異株への効果も2回接種すれば十分に高いことが分かってきており、とても心強いです。
これまでにないタイプのワクチンであることを不安に思う方もいらっしゃるでしょうが、これまで全世界で12億回以上が接種され、副反応についても多くのことが分かってきました。現在は16歳以上の人への接種が認められていますが、さらに低年齢への治験が海外で進められています。
インフルエンザワクチンなどと比べると接種後の発熱や倦怠感など全身症状が出る頻度が高いのは確かです。若い方には3割以上に見られますが、高齢になるほど全身症状が出る頻度は低くなるようです。接種後1〜2はゆっくり過ごせるように構えておくほうが安心でしょう。
アナフィラキシーについては、どの薬や予防接種でも起こり得ることで、適切に対応して警戒しているため大きな懸念にはならないと考えて良いと思います。日本で使われる予定のワクチンはmRNAワクチンという種類のものですが、これにより自分の遺伝子が書き換えられてしまったり、遺伝したりすることはありません。
ワクチンの供給が不透明で、この間の当院での接種は行えない状態でしたが、可能な限り当院でも接種ができるように準備を進めているところです。
宮崎医療生協では、これまでも宮崎生協病院や各クリニック、地域の医療機関などと連携して、慢性疾患や急性疾患の外来や入院医療、救急医療を提供してきましたが、加えて、有症状者を隔離して診察できるプレハブ棟や感染救急室を整備し、発熱外来や新型コロナ疑いの入院患者さん受け入れなどを行っています。感染対策には時間も人手も必要ですし、感染リスクの高い環境で常に緊張しながら疑い患者さんへの対応を続けており、新型コロナ以外の命に関わる病気への対応などの通常診療と並行して行っているため、職員のストレスも大きくなっています。
受診の際は感染対策にぜひご協力頂けたらと思います。


5月19日 ぎおんの家職員のワクチン接種

一人ひとりが感染対策の徹底を

新型コロナは本当にやっかいな病気です。一定の重症者・死者が出てしまう病気であることはもちろん、自分が無症状や軽症で済んでも、広げてしまうことでいつの間にか誰かの人生を終わらせてしまうかもしれないというリスクが付きまといます。
人とのつながりが断たれやすい生活にさせられています。新型コロナがやってくる前の日々の喜びがどんなものだったか思い出してください。
早くあの生活に戻れるよう、心で団結し、一人ひとりが基本の感染対策を続けましょう。そして、医療生協ならではの繋がりを大切にする活動が早く再開できるよう、強く願います。